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【理科教員も困惑】大阪府枚方市で起きた理科実験事故の原因は一体何なのか?


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2016年9月9日,大阪府枚方市の中学校第2学年理科の実験中に事故が起き

気分不良を訴えた生徒計8名が救急車に搬送されたというニュースが報道された。

症状は軽いようだが,関係者の早い回復をお祈り申し上げたい。

 

しかしこの事故,とても謎が多い。

気分不良となった原因は「硫黄のような異臭」なんだそうだが,

事故の時行っていたのは,酸化銅に炭素を混合し,加熱することで

銅と二酸化炭素の検出を確認する,いわゆる「酸化銅の還元」実験である。

この実験ではそもそも有臭の気体は出てこないし,

二酸化炭素の発生量も微量なので体調が崩れるということは考えにくい。

 

では,一体事故の原因は何なのだろうか?

各報道の気になるワードを集めながら,事故原因について考察してみたい。

 

枚方市で報道された理科実験事故の内容を読み取る。

はじめにこの事故についてどのように報道されているのか,

それを整理してみたい。

なお,文末の(  )で引用先を示してしたものは,

その報道だけが伝えている内容である。

赤字は私が気になった項目である。

  1. 2016年9月1日(木),9日とは異なる中学2年生のクラスで硫化水素を発生させる事件中に男子1名,女子3名が頭痛や手足のしびれを訴えて病院に搬送され,うち3名は検査入院した(産経新聞など)
  2. 事故は2016年9月9日(金)の2限,中学2年生の理科の授業で発生した
  3. 当時その場にいたのは,生徒35名,教員1名の計36名。生徒は1グループ4名程度で活動していた
  4. 実験当時,窓はあいていた
  5. 気分不良の訴えがあったのは授業の40分後(10:30頃)(読売新聞)
  6. 最初に気分不良を訴えたのは2名。まず保健室で対応したが改善が見られず,11:10頃に学校から199番があった
  7. 実際に搬送されたのは生徒8名(男子7名,女子1名)
  8. うち男子生徒1名は痙攣を起こして意識喪失。救急車の中で意識が戻る(読売新聞)
  9. 学校は「実験は異臭が発生するようなものではない」と認識していた
  10. 学校は「燃焼中に何らかの物質が紛れ込んだ可能性がある」と話している
  11. 校長は「化学変化を伴う理科の実験は自粛する」と話している(産経新聞)

あと,私が調べた情報だが,当該の中学校は理科の教科書に「啓林館」を使用。

といっても,啓林館は大阪に本社を置く大手教科書会社なので

大阪府内で啓林館の教科書が採用されていることは別に珍しい話ではない。

ただし,啓林館の教科書では中学校第2学年理科の単元

「化学変化と原子・分子」は年間指導計画でも1学期に行う想定なので,

学校内の何らかの理由で2学期に実施したのだろう。

 

当該実験で使用された物質以外の何かが原因か?

酸化銅を炭で還元し,銅と二酸化炭素を発生させる実験では

異臭を放つような物質は発生しないし,

二酸化炭素は空気中にも存在する物質であり,

気分不良で病院を搬送されるほどの二酸化炭素が発生するような実験でもない。

 

と考えると出てくるのが,項目1と項目10から

「鉄と硫黄の化合」で使用した薬品が紛れ込んだ可能性を想像しやすい。

 

「鉄と硫黄の化合」実験とは,粉末の鉄と硫黄を混ぜて加熱する実験である。

この実験では化合によってできた硫化鉄を塩酸に入れて

腐卵臭のする硫化水素の発生を確認する。

 

この実験は非常に事故が起きやすい。

当該中学校以外にも過去に何度も事故が起こり,その度に報道されている。

詳細は次の記事が詳しいので,参照してもらいたい。

もし,項目10で言われているように「物質が混入した可能性」があるとしたら,

銅粉末と炭素粉末を混ぜる際に使用する乳鉢か,

銅と炭素の混合物を加熱する際に使用する試験管に

反応物の鉄,硫黄,生成物の硫化鉄が混入したと考えられる。

 

ただし「酸化銅の還元」では塩酸を利用しないので

硫化水素が発生したとは考えにくい。

もしあるとしたら,硫化水素ではなく二酸化硫黄である可能性がある。

 

本当に異物混入(鉄と硫黄)が原因か?

しかし,だ。

 

常識的に考えて,すでに9月1日の時点で生徒が病院に搬送されているのに

前の実験で使用した薬品が器具が残るような単純なミスを犯すだろうか?

さらに,項目4を見ても換気もしていたようなので,

担当した理科教員は安全対策をしっかりと行っていたのではないかと推察される。

(無論,単に暑くて窓を開けていたことも考えられるが)

 

他にも疑問がいくつかある。

例えば「授業開始40分後」という情報。

中学校の授業は50分授業。

言い換えれば,授業終了10分前である。

授業を短縮していた可能性もあるが,それでも実験をするには少し遅すぎる。

 

また,項目7を見るように

病院へ搬送された生徒に性別の偏りがあるのはなぜだろうか。

あくまで経験に基づく推測だが,異臭などによって気分を悪くするのは

女子の方が多い。では今回の事故はなぜ男子に偏っているのか?

 

さらにもう一つ,痙攣を起こし意識を失った男子1名である。

仮に今回の事故と原因が硫化水素か二酸化硫黄だったとすると

空気中の濃度が0.3ppmを越えれば誰でも異臭を感じるだろう。

さらに濃度が10ppm以上になれば,目の痛みや気管の刺激が感じられるはず。

報道では「異臭」や「気分不調」しか報道されていないので

何か直接的な症状が身体から出ていたわけではないのだろう。

 

そう考えると,男子1名の痙攣・意識喪失については

発生した何らかのガスは直接的には関与していないと考えられる。

おそらく別の問題だ。

 

おわりに:複数の視点から検討が必要。

報道されている情報のみを集めてみて改めて思うことは,

当該の事故を「酸化銅の還元」によって起きたものではなく

何らかの異物混入で起きたものと考えるのは自然であるが,

単純に,週間前にあった「鉄と硫黄の化合」による

物質の混入と考えるには,情報が不足しているということである。

 

また,安全管理についても,

生徒が何らかの方法で別の物質を混入させた可能性も視野に

検討してく必要があるだろう。

 

少なくとも「化学変化を伴う理科の実験は自粛する」ことで

問題解決にならないことは言うまでもない。

(文字通り)臭い物に蓋をするだけでは何の教訓も得られない。

 

今後の原因究明に期待したい。

 

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