Learninghacker

たくさん遊んで"学ぶ"メディア

【備忘録】次期中学校学習指導要領改訂案の理科を読んだ第一印象


スポンサーリンク

f:id:uru3:20170222223903j:plain

こんにちは、uru(@uru_)です。年度末は忙しいですね〜(言い訳

2017年2月14日から学習指導要領のパブリック・コメントが実施された*1

若干日を空けてしまったけれど、次期小学校学習指導要領改訂案の理科を読んだ第一印象について前回述べました。

www.learninghacker.com

今回は中学校編です

小学校と同様に「資質・能力」を中心に現行指導要領から内容が大きく変わっています。学習内容が大きく変化していないだけに、目標と評価の一体化という点では十分留意する必要があるでしょう。 

加えて、中学校だけに見られる変化もあったので、それについて今回は言及していきます。

要約すると、次の2点が個人的に気になった点です。

  1. (総則)「生徒の発達支援」に関する文言の追加
  2. (理科)第2分野(生物分野)の大幅な改訂 

次期中学校学習指導要領改訂案の気になるポイント

私が中学校学習指導要領改訂案を見て気になった点をまとめてみました。

前回と同様、十分な吟味はまだできていないため、その点はご了承ください。また、小学校改訂案と重複する点についてはこの記事では触れていないので前回の記事を参照いただけると幸いです。

総則の特徴

まずは中学校改定案の総則についてみていきましょう!

「学校段階間の接続」の強調

今回気になったもののうち、最初に目に入ったのは「学校段階間の接続」という項目です

教育課程の編成に当たっては,次の事項に配慮しながら,学校段階間の接 続を図るものとする。
(1) 小学校学習指導要領を踏まえ,小学校教育までの学習の成果が中学校教育に円滑に接続され,義務教育段階の終わりまでに育成することを目指す 資質・能力を,生徒が確実に身に付けることができるよう工夫すること。 特に,義務教育学校,小学校連携型中学校及び小学校併設型中学校においては,義務教育9年間を見通した計画的かつ継続的な教育課程を編成する こと。

(2) 高等学校学習指導要領を踏まえ,高等学校教育及びその後の教育との円 滑な接続が可能となるよう工夫すること。特に,中等教育学校,連携型中学校及び併設型中学校においては,中等教育6年間を見通した計画的かつ継続的な教育課程を編成すること。

この項目は小学校にも書かれてあることに後から気がつきました。

小学校改定案では幼稚園教育要領と中学校、高等学校学習指導要領との計画的、継続的な教育課程を編成するという文言が書かれています。

現行要領でも「学年相互間の連携」や「系統的,発展的な指導」という文言は出てきているものの、「高等学校指導要領を踏まえ」という明確な指示が中学校学習指導要領に出てきていることは特に注意したいところです。小学校にしろ、中学校にしろ、この明記は今後、学習指導案の作成に対しても現場の先生が留意することになるでしょう。

教育課程の実施と学習評価における「国語科を要」という記述

学校評価に関する文言は小学校編でも注目しました。特に「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」については1(2)に注意を向けてみましょう。

まず、現行では

(1) 各教科等の指導に当たっては,生徒の思考力,判断力,表現力等をはぐ くむ観点から,基礎的・基本的な知識及び技能の活用を図る学習活動を重視するとともに,言語に対する関心や理解を深め,言語に関する能力の育成を図る上で必要な言語環境を整え,生徒の言語活動を充実すること。

とありました。

しかし、改訂案では

(2) 第2の2の(1)に示す言語能力の育成を図るため,各学校において必要な言語環境を整えるとともに,国語科を要としつつ各教科等の特質に応じ て,生徒の言語活動を充実すること。あわせて,(7)に示すとおり読書活動を充実すること。

とあります。

気になるのは「国語科を要としつつ」という表現です。

実は、小学校もこの文言あったが、小学校編ではスルーしてしまいました。しかし、学級担任である小学校と異なり、教科担任制の中学校以後において、どのように「国語科を要」としていくのが、この具体を考えていく必要はあるでしょう。国語の先生の役割に注目していく必要があると思います。

生徒の発達の支援に関する考え方の変化

ここからは中学校特有の記述についてみていきましょう。

私が、最初に次期中学校学習指導要領改訂案を読んで、総則の中で最も気になった記述が以下の文言です。

(1) 学習や生活の基盤として,教師と生徒との信頼関係及び生徒相互のよりよい人間関係を育てるため,日頃から学級経営の充実を図ること。また, 主に集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンスと,個々の生徒の多 様な実態を踏まえ,一人一人が抱える課題に個別に対応した指導を行うカ ウンセリングの双方により,生徒の発達を支援すること。

「教師と生徒との信頼関係及び生徒相互のより良い人間関係を育てる」という

文言までは現行要領と同じですが、その後に変化がみられます。

現行では、

教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間関係を育てるとともに生徒理解を深め,生徒が自主的に判断,行動し積極的に自己を生かしていくことができるよう,生徒指導の充実を図ること。

です。

現行で問題なのは「生徒理解を深める」のは誰なのか?ということ。無論この場合の主語は「教師」なのだろうけれど、子ども中心に記述されている指導要領にしてはちょっと不自然な表現でした。

これに対し,改訂案では「深める」文言は消え去り、

  • 学級経営の充実
  • 集団の場面で必要な指導や援助を行うガイダンス
  • 一人一人が抱える課題に個別対応した指導を行うカウンセリング

という記述が追加されています。

興味深いのは、集団に対する対応と、個人に対する対応とが明確に区別された表現が用いられていることである。

また、「ガイダンス」の役割にも変化が見られます。

現行では「現在及び将来の行き方を考え行動する態度や能力を育成する」ことが目的だったのに対し、改訂案ではそのような役割の限定が外されています。

改訂案では、さらに続いて

(2) 生徒が,自己の存在感を実感しながら,よりよい人間関係を形成し,有意義で充実した学校生活を送る中で,現在及び将来における自己実現を図っていくことができるよう,生徒理解を深め,学習指導と関連付けながら, 生徒指導の充実を図ること。
(3) 生徒が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・ 職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことが できるよう,特別活動を要としつつ各教科等の特質に応じて,キャリア教育の充実を図ること。その中で,生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう,学校の教育活動全体を通じ,組織的かつ計画的な進路指導を行うこと。

とあります。

この部分から感じられることは、

  • 人間関係の育成(コミュニケーション能力あるいは協調性)の重視
  • 自己肯定感の向上の重視
  • 「将来」についての観点(不透明感)(将来の生き方→将来における自己実現)
  • いじめ問題

等々。

特に2番目については、端的に言えば、「この行く先が不透明な社会において,中学生に「生き方」を考えるなんて無理じゃね?」ともとれます。列挙すればまだまだ出てきそう…。

この点は読みようによっては、中学校における進路指導のあり方の変化に対応して、中学校に具体的なアクションが必要だと思われます。質的な変容を求められているのでしょう。注意の必要な部分だと思われるので、詳細は総則の解説編を待ちましょう。

学齢期を経過した者への配慮

小学校と同様に中学校でも「特別な配慮を必要とする生徒への指導」について記述が見られますが、中学校特有の項目として「学齢期を経過した者への配慮」という記述があります。

(4) 学齢期を経過した者への配慮
ア 夜間その他の特別の時間に授業を行う課程において学齢期を経過した者を対象として特別の教育課程を編成する場合には,学齢期を経過した 者の年齢,経験又は勤労状況その他の実情を考慮の上踏まえ,中学校教育の目的及び目標並びに第2章以下に示す各教科等の目標に照らして,中学校教育を通じて育成を目指す資質・能力を身に付けることができるようにするものとする。

イ 学齢期を経過した者を教育する場合には,個別学習やグループ別学習 など指導方法や指導体制の工夫改善に努めるものとする。

これは文部科学省の「中学校の夜間学級の推進について」*2の内容を

受けたものと思われます。

中学校理科の変更点

次に中学校理科の変更点について見てみたい。

先に述べると,今回注目したいのは,第2分野,特に生物分野の変化です。

理科の目標の記述

現行では

自然の事物・現象に進んでかかわり,目的意識をもって観察,実験などを行い, 科学的に探究する能力の基礎と態度を育てるとともに自然の事物・現象についての理解を深め,科学的な見方や考え方を養う。

とありましたが、改訂案では

自然の事物・現象に関わり,理科の見方・考え方を働かせ,見通しをもって観察,実験を行うことなどを通して,自然の事物・現象を科学的に探究するために必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。

(1) 自然の事物・現象についての理解を深め,科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能を身に付けるようにする。

(2) 観察,実験などを行い,科学的に探究する力を養う。
(3) 自然の事物・現象に進んで関わり,科学的に探究する態度を養う。

一瞬「小学校と同じか?!」と思うほどよく似た変更ですが、以下の点が小学校改訂案と中学校改訂案とでは違いが見られます。

  • (小)自然の事物・現象についての問題を科学的に解決する→(中)自然の事物・現象を科学的に探究する
  • (小)自然の事物・現象についての理解を図り→(中)自然の事物・現象についての理解を深め
  • (小)観察,実験などに関する基本的な技能→(中)科学的に探究するために必要な観察,実験などに関する基本的な技能
  • (小)問題解決の力を養う→(中)科学的に探究する力を養う
  • (小)自然を愛する心情や主体的に問題を解決する態度を養う→(中)自然の事物・現象に進んで関わり,科学的に探究する力を養う。

端的に言えば「問題解決」から「科学的探究」への変化と考えれば良いでしょう。もともとどちらも抽象的な表現ではありますが、特に(3)の「科学的に探究する態度」をどう評価するかが課題となりそうだ。

理科の学習内容の微増部分

小学校と同様、中学校でも学習内容は微増しています。ここでは第2分野の生物分野以外の変化について紹介します。

第1分野の変更

(1) 身近な物理現象 (知識)

(ア) 力のつり合い

物体に働く2力についての実験を行い,力がつり合うときの条件を見いだすこと。また,力の合成と分解についての実験を行い,合力や分力の規則性を理解すること。

現行(5)「運動とエネルギー」から移動してきています。ベクトルをどうするのか?という微妙な問題は現行と同様に棚上げ状態だろうか? 

また、身近な物理現象の「光の反射・屈折」の取扱いでは

白色光はプリズムなどによっ ていろいろな色の光に分かれることにも触れること。

というように「分光」についての内容も地味に追加されています。 

(2) 身の回りの物質 (水溶液の均一性の削除)

(削除)

水溶液の均一性は小学校5年生に移行したため、その文言が削除されました。

また、内容の取扱いでは現行の記述にある

代表的なプラスチックの性質にも触れること。

という記述が、(7)「科学技術と人間」に移動しています。

(3) 電流とその利用 (知識)

小学校6年から以下の内容が移動してきています。

(4) 電気の利用

手回し発電機などを使い,電気の利用の仕方を調べ,電気の性質や働きについての考えをもつことができるようにする。

ウ 電熱線の発熱は,その太さによって変わること。

とは言っても、内容自体は教科書等では触れられているものが多く実質的にはほぼ変わらないといって良いでしょう。

しかし、内容の取扱いの方には重要な追加が書かれています。

エ アの(ア)のエについては,電流が電子の流れに関係していることを扱うこと。また,真空放電と関連付けながら放射線の性質と利用にも触れること。

「静電気と電流(アの(ア)のエ)」の中に「放射線」(β線?)が関連づけられている。

放射線といえば、現行学習指導要領の実施が3.11の直後だったこともあって放射線教育については2012年にかなり注目されていました。「電流」の単元で放射線という言葉が出てきたことは、今後なんらかの余波があるかもしれない。

(4) 化学変化と原子・分子(名称の変更)

(イ) 化学変化

ア 化学変化

「化合」から「化学変化」へ名称が変更されています。同様に2種類以上の物質を「化合させる」という文言も「反応させる」へ変更され、化学変化における酸化と還元についても「化学変化における」という言葉が追加されました。

しかし「化学変化と原子・分子」で本当に注目したいのは、内容の取扱いの方。

また,「記号」については,元素記号で表されることにも 触れ,基礎的なものを取り上げること。その際,周期表を用いて多くの種類が存在することにも触れること。

中学校で「元素記号」という言葉が登場したのはとても目新しいです。高校化学では当然のように出てくる「元素」という言葉ですが、実は中学校で登場するのは昭和53(1978)年以来、39年ぶり! 周期表についての文言もあることを踏まえると、113番元素の「ニホニウム」にも触れる気マンマンですね(笑

(5)運動とエネルギー

(ア) 力のつり合いと合成・分解

ア 水中の物体に働く力

水圧についての実験を行い,その結果を水の重さと関連付けて理解すること。また,水中にある物体には浮力が働くことを知ること。

「浮力」が「身近な物理現象」から「運動とエネルギー」へ移動してきました。ちなみに現行の「身近な物質現象」の説明では

(イ) 圧力

圧力についての実験を行い,圧力は力の大きさと面積に関係があることを見いだすこと。また,水圧や大気圧の実験を行い,その結果を水や空気の重さと関連付けてとらえること。

とあるように、「浮力」が登場していなかったが、今回は明記されている。

(6)化学変化とイオン

現行学習指導要領で20年ぶりに復活した「化学変化とイオン」だが、これにさらに内容が追加されています。

ア 金属イオン

金属を電解質水溶液に入れる実験を行い,金属によってイオンへのなりやすさが異なることを見いだして理解すること。

言葉としては出てきませんが「金属のイオン化傾向」についての記述が登場。この文言は昭和45(1970)年の改訂以来なので、なんと47年ぶりの復活!! 

ただし、内容の取扱いでは、

エ アの(イ)のアの「金属イオン」については,基礎的なものを扱うこと。

とある。

でもきっと中学校の先生、「貸そうかな・・・」を教えちゃうんだろうなぁ。

また、金属イオンと同様に電池の内容にも変化が現れている。

イ 化学変化と電池

電解質水溶液と2種類の金属などを用いた実験を行い,電池の基本的な仕組みを理解するとともに,化学エネルギーが電気エネルギーに変換されていることを知ること。

さらに、内容の取扱いでは、

アの(イ)のイの「電池」については,電極で起こる反応をイオンのモデルと関連付けて扱うこと。その際,「電池の基本的な仕組み」につい ては,ダニエル電池を取り上げること。また,日常生活や社会で利用さ れている代表的な電池にも触れること。

とあるように、電池の仕組みをイオンモデルと関連づけて扱うことが明記されている。「ダニエル電池」を使うことも明記。亜鉛と銅の反応ということになる。

現行でもすでに電池は登場してきているものの、金属のイオン化傾向に触れずに電池の説明活動をするのは不可能だったこともあり、中学校の先生でもかなりの割合でイオン化傾向の実験をやっていたようです。そのような実態もあるため、電池に関する変更は現場の先生に沿うものでしょう。

あと「化学変化とイオン」の単元ではもう一つ気になる内容がある。

それは、内容の取扱いにある以下の文章。

ア アの(ア)のアの「原子の成り立ち」については,原子が電子と原子核 からできていることを扱うこと。その際,原子核が陽子と中性子でできていることや,同じ元素でも中性子の数が異なる原子があることにも触れること。また,「イオン」については,化学式で表されることにも触れること。

というように「中性子の数が異なる原子(同位体)」の概念が出ています。私の知る限り、戦後の中学校理科で同位体が出てきたのは初めてだと思われます(間違っていたらごめんなさい)。

同位体の理解は一見簡単そうで、なかなか上手くいきません。同位体を「イオン」の単元で学習することが学習活動と結びつけるかどうか、ここがやや問題となるでしょう。

第2分野(地学分野)の変更

(2) 大地の成り立ちと変化

ア 自然の恵みと火山災害・地震災害

自然がもたらす恵み及び火山災害と地震災害について調べ,これらを火山活動や地震発生の仕組みと関連付けて理解すること。

イ 大地の成り立ちと変化について,問題を見いだし見通しをもって観察, 実験などを行い,地層の重なり方や広がり方の規則性,地下のマグマの性質と火山の形との関係性などを見いだして表現すること。

小学校と同様に、自然災害に関する内容が詳細に追加されています。主に地質学を扱うこの分野では「火山災害」と「地震災害」が明記されました。

また、内容の取扱いでは、

イ アの(イ)のアについては,地層を形成している代表的な堆積岩も取り上げること。「地層」については,断層, 褶曲にも触れること。「化石」 については,示相化石及び示準化石を取り上げること。「地質年代」の 区分は,古生代,中生代,新生代を取り上げること。

とあります。「地質年代」について、現行では「新生代の第三紀及び第四紀」とあったが「新生代」のみとなりました。 

さらに、

エ アの(ウ)のイについては,地震の現象面を中心に扱い,初期微動継続時間と震源までの距離との定性的な関係にも触れること。また,「地球 内部の働き」については,日本付近のプレートの動きを中心に扱い,地 球規模でのプレートの動きにも触れること。その際,津波発生の仕組み についても触れること。

とあります。現行に「津波発生の仕組み」が追加された形。日本大震災を受けてのものであることは言うまでもないでしょう。

(4)気象とその変化

ア 気象要素

気象要素として,気温,湿度,気圧,風向などを理解すること。また,気圧を取り上げ,圧力についての実験を行い,圧力は力の大 きさと面積に関係があることを見いだして理解するとともに,大気圧の実験を行い,その結果を空気の重さと関連付けて理解すること

気象観測の要素として「大気圧」との関連付けが強調されています。物理分野から移動してきた形となります。

イ 気象観測

校庭などで気象観測を継続的に行い,その観測記録などに基づいて,気温,湿度,気圧,風向などの変化と天気との関係を見いだして理解するとともに,観測方法や記録の仕方を身に付けること。

現行と比べると、「理解する」ことと「仕方を身に付けること」の文言の順序が逆転しています。少し解釈が難しいところだがですが、「理解する」ことがより重視された形となったと言っていいでしょう。

(エ) 自然の恵みと気象災害

ア 自然の恵みと気象災害

気象現象がもたらす恵みと気象災害について調べ,これらを天気の変化や日本の気象と関連付けて理解すること。

こちらでは「気象災害」について明記されました。

なお「気象災害」は内容の取扱いについて、

オ アの(エ)のアの「気象災害」については,記録や資料などを用いて調べること。

という、少し珍しい説明が加えられています。「調べる」という活動が取扱いの中で直接的に指定されているのは理科の中では他に見られません。

(6) 地球と宇宙

月や金星の運動と見え方

月の観察を行い,その観察記録や資料に基づいて,月の公転と見 え方を関連付けて理解すること。また,金星の観測資料などを基に, 金星の公転と見え方を関連付けて理解すること。

現行では月のみでしたが、新たに「金星」に関する記述が増えました。

(7) 自然と人間

ウ 地域の自然災害

地域の自然災害について,総合的に調べ,自然と人間との関わり方について認識すること。

「地域災害」についての記述が増えました。 

第2分野(生物分野)の大幅な変更!

最後に第2分野の生物分野について触れておく必要があります。

現行の生物は「植物の生活と種類」「動物の生活と生物の変遷」「生命の連続性」という3つの構成があり、基本的には「植物」「動物」「遺伝」という順でした。

しかし、2017年の改訂案では構成そのものが変化し、「いろいろな生物とその共通点」「生物の体のつくりと働き」というように植物と動物を分けた学習が見直されています。 

生物に関しては、すでに平成21(2009)年、高等学校の生物で巨大な変化があったこともあり、中学校でも何か大きく変わるんじゃないかと思ってはいましたが、やはり…という感じです。

では、詳しく見ていきましょう。

(1) いろいろな生物とその共通点(新)

この単元の特徴は植物と動物についての共通点と相違点について、観察を通して着目し、基本的なつくりを理解することにあります。

例として2つの文章を紹介しましょう。

イ 生物の特徴と分類の仕方

いろいろな生物を比較して見いだした共通点や相違点を基にして 分類できることを理解するとともに,分類の仕方の基礎を身に付けること。

ア 植物の体の共通点と相違点

(イ) 生物の体の共通点と相違点

ア 植物の体の共通点と相違点

身近な植物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,共通点や相違点があることを見いだして,植物の体の基本的なつくりを理解すること。また,その共通点や相違点に基づいて植物が分類できることを見いだして理解すること。

イ 動物の体の共通点と相違点

身近な動物の外部形態の観察を行い,その観察記録などに基づいて,共通点や相違点があることを見いだして,動物の体の基本的なつくりを理解すること。また,その共通点や相違点に基づいて動物が分類できることを見いだして理解すること。

「共通点と相違点」の着目は、生物を「分類」できるようになるためということが読み取れます。生物学において「分類」は最も基本的な「科学的探究の方法」であることを踏まえると「分類」が強調されるようになったことは目標とも整合性が取れていると言えるでしょう。

ただし、注意したいのは「共通点と相違点」の中でも出てくるように「外部形態の観察」による分類である、という点です。事実、内容の取扱いでは、観察方法も細かい指定があります。

現行では、

(2) 内容の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。
ア アの(ア)の「生物」については,植物を中心に取り上げ,水中の微小

な生物の存在にも触れること。

でしたが、改訂案では、

(3) 内容の(1)については,次のとおり取り扱うものとする。
ア アの(ア)のアについては,身近な生物の観察を扱うが,ルーペや双眼実体顕微鏡などを用いて,外見から観察できる体のつくりを中心に扱うこと。

とあるように、「ルーぺ」「双眼実体顕微鏡」が明記されており、「外見から観察できる体のつくりを中心に扱う」というように形態的分類をさせようとしていることが伺えます。

つまり、この単元の内容は生物についての「形態学的分類」についてなのです。高校生物が分子生物学と進化論を柱として進む内容となっているため、現代の支流である「分子系統学的分類」ではない、という点は現場の教員が事前によく理解しておく必要があります。

(3) 生物の体のつくりと働き(新)

「いろいろな生物とその共通点」が外部形態に着目しているのに対し、こちらの単元は生物体内の構造について着目している点が特徴です。

また、以下に示すように、生物の観察・実験とその技能についても細かな指定が加わっていることも留意したいところです。

(ア) 生物と細胞

ア 生物と細胞

生物の組織などの観察を行い,生物の体が細胞からできていること及び植物と動物の細胞のつくりの特徴を見いだして理解するとと もに,観察器具の操作,観察記録の仕方などの技能を身に付けること。

例えば、細胞レベルの組織観察では、観察器具の操作、観察記録の仕方などの技能について明記されています。要は「顕微鏡の使い方」と「スケッチ」の問題です。こちらも生物学における科学的探究の方法と言えるでしょう。ただ「スケッチ」は指導上の工夫が試されるところでもあります。

(5) 生命の連続性

名前だけなら現行にもある分野ではありますが、大きな特徴は現行の「動物の生活と生物の変遷」に含まれていた「生物の変遷と進化」が「生命の連続性」に移行してきたことです。移行することで、植物の進化についても関連づけられるようになっただけでなく、多様性についても言及できるようになっています。

現行は、

エ 生物の変遷と進化

(ア) 生物の変遷と進化

現存の生物や化石の比較などを基に,現存の生物は過去の生物が変化して生じてきたものであることを体のつくりと関連付けてとらえること。

改訂案は、

(ウ) 生物の種類の多様性と進化

ア 生物の種類の多様性と進化

現存の生物及び化石の比較などを通して,現存の多様な生物は過去の生物が長い時間の経過の中で変化して生じてきたものであることを体のつくりと関連付けて理解すること。

改訂案では、生物の進化を生物多様性と関連づけていることがよく分かります。ただし、ここでいう「多様性」とは「遺伝的多様性」であることに注意です。

現行では「体のつくり」と関連づけることとなっていたが、相同器官と相似器官の区別は実は結構難しい問題です。また、相似器官については、似たような環境下で別の種の生物が似たような体のつくりになっていくことは生態系の上では重要な観点であり、相同器官だけに着目するのは本来おかしいのです。改訂案で、形態学と進化を隔てたのは現代生物学の観点では正しい選択だと思われます。

しかし、それだけに、中学校の現場の先生には生物学に関する知識の更新はかなり重要です。

なお、メンデルの法則については「分離の法則」についての文言が消え、いよいよメンデルの法則が古典化しようとしています。

おわりに:中学校では生物の学習環境が課題か?

ここまで見てきたように、中学校での学習内容だけを見れば微増といったところではありますが、特に生物に関しては、高校と同様に、現代化したといっていいでしょう。「資質・能力」に見合った学習の目標と評価の一体化を進めるだけでなく、生物分野では現場教師の知識の更新が求められています。

加えて、生物に関しては観察・実験の充実について図ろうとしているのも読み取れます。学校環境に大きく左右されやすく、時期的、経済的な制約がある中でどこまで学習環境デザインを工夫できるかは焦点となるでしょう。

*1:「学校教育法施行規則の一部を改正する省令案並びに幼稚園教育要領案、小学校学習指導要領案及び中学校学習指導要領案に対する意見公募手続(パブリック・コメント)の実施について」, http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000878&Mode=0

*2:文部科学省(2015)「中学校夜間学級の推進について」,http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/yakan/