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【書評】『健康を食い物にするメディアたち』WELQ問題を振り返りネットメディアを捉え直す


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こんにちは、uru(@uru_)です。今回は朽木誠一郎さんの著書『健康を食い物にするメディアたち ネット時代の医療情報との付き合い方 』について紹介します。

先日、ライターをしている友人と飲みの席で話をしたときにこの本を紹介してもらいました。数こそまだ少なかれ、科学情報をネットメディアや商業誌に書く機会がある私の最近の大きな関心の一つです。なかでも科学的なエビデンスのない医療記事の大量削除を迫られた2016年のWELQ問題を知ることは非常に有益だと感じました。

ただ、他にも興味を引かれた部分が今回はありました。この本のAmazonの評価が真っ二つに分かれていたのです。

Amazonの星は真っ二つ!だからこそ自分の目で確かめたかった

ネットメディアについて云々知ろうとする前に、いきなりAmazonのレビューを参考にするその神経を疑われたらおしまいなのですが・・・他の人の感想を知りたくなるのは読書好きの性だと私は思うので、ここはぜひ暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。

『健康を食い物にするメディアたち』は2018年3月に出版された本です。それなりに時間も経っているので、そこそこの数のレビュー数が入っていました。が、気になったのはその偏りでした。

5つ星中平均が3.7。書籍としては珍しくない数字だと思います。しかし内訳をみると星3がゼロ。4以上と2以下に真っ二つに分かれており、星1も17%と少なくありませんでした(と言ってもn=18の評価なのですが)。

もう少し詳細が書かれたカスタマーレビューを見ると、状況はもう少し違います。書かれたレビューは概ね建設的な内容であり、否定的な意見の方は本書の論点からはズレている、というのが最初の印象でした。

話題性があるという意味では悪くないのですが、果たしてどんな内容なのか。

メディア関係者から見たネットメディアの特徴

実際に読んだ私の感想は、率直に「共感する点が多かった」という一言に尽きます。

本書の中には「経済合理性」という言葉が出てきます。Amazonの否定的レビューに論点のズレを感じたのは、レビュー者がこの本の比較的前半にこの言葉が出ていることの意味をクリティカルに受け取っていないためです。

医療にしよ、メディアにしろ、基本的には著者のいう「経済合理性」、すなわち「売れるから作る」という動機がある。

これは公的機関の広報活動などでない限りはほとんど働くし、それを前提知識として読者に与えているのは、むしろ非常に良心的だと思います。そして、メディアや広告の存在そのものに対する否定的レビューが的外れであることも同時に説明でき、分かりやすいながらもとても合理的です。

問題なのは、経済合理性があることではなく、バランスが崩れたときであると読み取れます。ネット上の広告システムによる収益の追求に走り、質を無視した量産化を図った結果が、デタラメといっても言い過ぎではない医療記事が蔓延したWELQ問題であり、問題として表面化したことによってGoogleなどの検索サイトやネットメディアの方針が変わっていきました。

この当時、私もこのニュースを見て非常に関心をもちました。ただここで非常に大きなモヤモヤを感じていました。

テレビや新聞では「ネットメディアの信頼性」が問題視されました。しかし、本当にそうだろうか?と。

この疑問は本書の主張と重なる部分が多く感じられました。問題を問題化したのはネットだった。テレビや新聞よりもずっと監視され、おかしな情報を指摘すれば訂正を迫れるほどのインパクトを持っているのはネットではないか?このようなネットの特徴を「フラットでインタラクティブ」と呼ぶのは、同じくネットを日常的に利用する私にとっては非常に共感する部分が多い指摘でした。

さらに本書では、正確性の乏しい医療情報に騙されない方法が書かれています。いわゆるリテラシーだけでなく、その限界や、科学側だけの論理では解決できないことについて触れられている点は率直に良心的だと思いました。むしろ、誰でも「騙される」可能性があることを前提に考えると、違った解決の糸口が見えてきます。それが、相互監視のできるネットだと著者は述べています。

おわりに:被害を受けるのも、被害を食い止めるのもネットにつながった人たち

医療に限りませんが、科学的な情報の正確さを最大限高めようとすると、それは原典である論文になります。科学者コミュニティに向けて書かれたものですから、一般の人は普通読みませんし、読めません。

分かりやすくしようとすれば、どこかに歪みが生まれます。しかし、それで多くの人に読まれる情報になるならそれは有益性のある情報です。

そして、そのさじ加減はとんでもないほど難しいものです。著者の文面にもそのジレンマが滲み出ており、そのジレンマは残念ながら当事者でしか理解の難しいもののように感じます。今こそ共感しますが、もし2年前に読んでいなかったら、もしかすると著者の主張が傲慢に見えた可能性は十分にあります。

この本をお勧めしたいのは、非科学的な情報に危機感を持ち、ネットで発言したり人にわかりやすく説明したことがある/してみたいと思っている人です。ネットにつながる人たちがみなオウンドメディアをもてる時代だからこそ、ネットの仕組みを知ることでできることが少し広がるのではないかと思います。

私自身まだ未熟な点がありますが、この本を読んで、諦めず続けることを頑張ろうと思いました。

これは全く科学的ではありませんが、行動の原動力は感情であるというのも、人間の本質でしょうね。