【潜入】宮ヶ瀬ダム直下の水力発電所・愛川第1発電所の深部を探れ!

こんにちは、uru(@uru_)です。前回、ツーリングで宮ヶ瀬ダムに来た話の続きです。上の写真はそのダムの地下にある重要な装置の一部です(答えは最後にあります)。

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宮ヶ瀬ダムの観光放流は大変美しい景色でした。それに対し、

「放流?あれは正直なんの役にも立ちません。ただ落としてるだけ」

と言い放ったのは、今回紹介する宮ヶ瀬ダム直下に併設する水力発電所・愛川第1発電所の職員の方。このセリフの後、

「だって、アレは人のために何も仕事してないもの」

と仰っていたが大変印象に残りました。

そもそもダムが何のためににあるのかを考えれば至極真っ当なご意見。にも関わらず普段はダムとか川とかがどんな状態なのかもよく考えずに暮らしているなとつくづく考えさせられました。

今回はダム建設の目的を振り返りながら、愛川第1発電所の中身をご紹介します。

人の暮らしを支える・守るダム

ダムはそもそも何のために作られたのか。それは大きく3つに整理できます。

  1. 人の暮らしに必要な水を確保し、適切に分け与えるため
  2. 大雨などの水害から守るため
  3. 発電するため

冬に1級河川を見ると、川幅の割に水がチョロチョロとしか流れていない姿を見たことはありませんか?これは雨の少ない太平洋側の河川の話。

よくよく考えると、あの景色は川本来の自然の姿ではありません。ダムという名の蛇口で調節された水なのですから。完全に止めてしまうと河川の生態系(水生生物や鳥たちの暮らし)が壊れてしまうので、最低限流している姿です。

春から夏にかけては田植えの季節。農業用水を多く必要とします。雨の多い時期になれば水を貯め、一般用水や工業用水を確保しつつ、水を人に分け与えます。水不足や大雨など水量が極端に増減する際にも調節しているのはダムです。

自然や人間の生活に与えた影響は大きいです。その礎の元に不自由のない生活を営めていると考えると、非常に感慨深いものがあります。

宮ヶ瀬ダムも神奈川県民が水に困らないよう作られたダムです。宮ヶ瀬ダム周辺の山から集まる水だけでなく、相模川上流に位置する道志ダムの水をパイプで繋いで水を集めています。水不足等で相模ダムや城山ダムの貯水量が減ってきたら、今度は宮ヶ瀬ダムからそちらのダムへ水を送って継ぎ足すという2段構えになっているそうです。

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・・・これ、計画した人すごくないですか?!今だからこそ「自然にやさしくないなぁ」なんて捉え方もできますけど、戦後の高度経済成長と人口増加に対応するために本気で水のこと考えていたということなんでしょう。

愛川第1発電所の内部に潜入

さて、そんなダムですが、最後のもう一つの役割が「発電」。せっかく重力で水が落ちてくるんだから、その運動エネルギーをついでに電気に変えちゃおうぜ!というのがざっくりとした発想です。どこまでも無駄がないです。

宮ヶ瀬ダムには第1と第2の発電所があります。そのうち今回見学させてもらったのは、現在稼働していない第1発電所の方です。

前回紹介したダム。実はダム下方にある四角い建物の下が水力発電所になっています。

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私が宮ヶ瀬ダムに行ったこの日、ちょうど2018年最後の無料見学会の日だったのです!なんという幸運!

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これは行くしかあるめえよ!一気にテンションが高まります。私、原子力と火力と風力は中まで入ったことがあるのですが、なぜか水力だけはなかったので、これでコンプリートです!(レア度的には原発が一番難しいのだけれど)。

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地上から見える建物は2階建ですが、下は地下5階となっていて、発電設備本体も下にあります。今更ですが、撮影の許可はいただいております。

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見学は上から順に水力発電設備を案内していただきました。

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まず案内されたのが「励磁機」と「上部ブラケット」という発電機を上から固定している部分。

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周りに立っている人から、なんとなくスケールが分かるでしょうか。原子力や火力に比べればタービンと呼ばれる歯車が小さい、と私は思ってしまいました。

ただ実際本物を見て感動しました。そもそも原子力は放射線で、火力は熱で近づけないのに対し、水力は目の前で見れるというのが最大の特徴でしょう。

案内してくださった県の職員の方は各所の構造や役割を丁寧に教えてくれました。

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さらに深部へ進んでいきます。

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次に見せていただいたのが、配線コード。

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先ほどの励磁機の下には発電機回転子(磁石)と発電機固定子(コイル)があり、主軸が回ることによって磁石がぐるんぐるんと回転することでコイル内で電流が走る、という仕組みです。

これが「電磁誘導」ですね。

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言葉だけ聞くとちょっと難しそうですが、駅の改札機にSuicaをタッチする瞬間にカードの中で起きていることと同じ。仕組み自体は相当に身近なものです。

配線コードはその電流が流れる場所、と説明を受けました。まるで乳搾りの乳みたいな表現で教えていただきましたが、もし稼動していたら1万ボルトを超える電流が流れる場所でもあります(もし触ったら死ぬどころの騒ぎじゃありません)。

そんな電力を安全かつ確実に作り出すための制御室がこちら。意外と狭かったです。通常は無人で、実際には別の場所で管理しているそうです。

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稼動していないので、電力は0kWです。

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そして最後に見せてもらったのが、最も低いところにある、水が流れる場所。水の運動エネルギーを先ほどの回転子の回転に変える場所が最深部にあります。

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これが入口弁。写真の手前側が宮ヶ瀬ダム側になり、奥が主軸と水車にあります。この後管はだんだん細くなりながら、カタツムリのように水車を包み、内側にある穴から水車に向けて水を送ります。こうすることで水車のどの場所にも水の力が均等にかかるよう設計されているそうです。

では、最後に主軸を見ましょう。

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ちなみに水車の製造元は東芝。当時の栄光は今何処・・・

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そしてこれが最深部。発電の要である主軸です。

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水量に合わせて弁を調節し、水車にかかる水圧を調整する役割もあるそうです。

おわりに:こんなに発電機の近くを見れるとは思っていなかった

愛川第1発電所の見学は完全にノープランでした。にもかかわらず職員の皆様には非常に丁寧で分かりやすく面白いお話を聞くことができました。この場を借りてお礼申し上げます。

ブログに書いた説明は実際に聞いたことのほんのわずか一部ですが、その面白さがもしこれを読んでいるあなたに少しでも伝われば幸いです。

先ほども述べたとおり、水力発電を間近でみるのは今回が初めてでした。というか、こんな近くまで見せてもらえるなんて知りませんでした。

機会が少ないだけに貴重な体験でした。もし興味のある方がいたら、ぜひ来年行ってみてください。

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uru
日常生活と科学をむすぶ、学びのデザイナー。新しいガジェットやギアが大好き。好きなことは読書、バイク、旅、温泉、アニメ鑑賞その他いろいろ。生活をよりシンプルに心地よいものへ変えていきたい。

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